このページには、以下の項目があります。
- 歯周病の症状と原因について
- ブラッシング指導
- 歯周病の治療
- 歯周病に関する説明パンフレット
1.歯周病の症状と原因について
(1)歯周病の症状
子供や若い人で炎症が歯肉だけに起こっている場合を歯肉炎と呼びますが、成人の場合炎症が歯肉だけということはむしろ少なく、炎症が歯肉を通り越して、歯を包んでいる組織全体に及んでいることがほとんどです。具体的には歯肉、歯槽骨という歯を包んでいる骨、歯根膜という歯と骨の間のクッションと歯の根の表面のセメント質に炎症が起きている場合を慢性辺縁性歯周炎と言い、一般的には「歯周病」と呼ばれています。昔は「歯槽膿漏」と呼んでいました。厳密にいうと成人の9割以上は程度の差はありますが、歯周病にかかっています。
歯周病の症状としては、
歯肉が腫れて、赤くなり、ひどい時はぶよぶよして、少し触っただけで出血したり、膿が出てきます。
次第に歯肉がやせて、退縮し、歯の根の部分が露出して歯が長くなったように見えます。それまで歯肉に中に隠れていた歯の根の部分が水や空気にしみやすくなることもあります。
また歯肉がやせてくるのといっしょに、歯を支えている骨も溶けてきて、歯がぐらぐらしてきて、噛むと痛みがでてきます。さらにひどくなると、歯肉から膿が出るようになり、体調が悪くなると歯肉が腫れてきます。時には顔の形が変わるほどひどく腫れることもあります。
このような状態がひどくなると歯を抜かなければならなくなります。
人が歯を喪失する原因の1割は事故によりますが、残りの9割の原因としては虫歯と歯周病がほぼ半分ずつを占めています。若い頃に歯を失う原因の大半は虫歯ですが、徐々に歯周病で歯を失うことが多くなり、35歳以降では歯周病によって歯を失うことが多くなり、高齢になると歯を失う原因の大半は歯周病となります。
つまり、歯周病を予防できれば、高齢時の歯の数は倍にできるのです。
(2)ポケットについて
健康な歯肉の場合、歯と歯肉はぴったり密着しており、歯と歯肉の境の部分の1~3mmが剥がれているだけで、細菌やその塊である歯垢が入り込まないようになっています。しかし歯肉に炎症が起きると、歯と歯肉が剥がれ始め、ポケットと言われる溝ができた状態になります。
このようなポケットができますと、そのポケットの中に細菌や歯垢あるいは歯石が溜まり始め、それらのためにさらに歯肉の炎症がひどくなり、よけいポケットが深くなるという悪循環が起こります。
このように歯肉の炎症とポケットの深さは関係が深く、ポケットの深さを測ることによって、歯肉の炎症の進み具合や健康状態が分かります(歯を支えている骨の健康状態はレントゲン写真で分かります)。
ポケットの深さが4mm以上は病的な状態と考えられ、8mm以上になると、抜歯しなければならないことがあります。
ポケットの深さは目盛りのついた器具をポケットに挿入して測りますが、炎症の強い歯肉ではちょっと触っただけで、出血したり、痛んだりすることがあります。
歯周病の治療によって歯肉の腫れが退いてくるとポケットは浅くなります。但し、ポケットの底の位置はほとんど変わらず、腫れが引いて、見かけ上のポケットの深さが浅くなっただけです。
(3)歯周病の原因
歯周病の原因として多くのことが挙げられています。
まず口の中の原因としては、
歯垢(70%が細菌です)
歯石
食べかす(細菌の栄養になります)
歯の着色物(たばこのやに、茶しぶ、空気の汚れ)
食片圧入
虫歯
習癖(口呼吸、喫煙、舌習癖、歯軋り、歯ブラシの不正使用)
歯列不正
咬合異常
不良補綴物
などがあります。
全身的原因のみで歯周病が起こるのはまれであるが、その因子を挙げると、
遺伝、年令、栄養(ビタミンB群、C、D)、内分泌障害、白血病、自律神経失調、薬の副作用(ダイランチン)、全身疲労、などです。
(4) 歯垢(プラーク)について
歯周病の主原因はこの歯垢です。
歯垢は歯の表面にくっついている白色ないし黄褐色の沈着物で、食べかすではなく、その70%が細菌です。残りの30%はその細菌の作り出したねばねばした物質(デキストランなど)で、それで歯にくっついているのです。ちょうど蜘蛛と蜘蛛の巣のようなものです。

歯垢を耳かきの先くらいとると、その中には約30億の細菌がいるといわれ、普通の人の口の中にはゴキブリ2匹分の細菌がいるそうです。
この細菌のために歯周病が起こるのです。また歯周病だけではなく、細菌の出す酸のために、虫歯にもなります。
【歯周組織が破壊されるメカニズム】
①プラークが歯周組織を刺激
②細胞(肥満細胞・好塩基球)が化学伝達物質(ヒスタミン)を放出
③ヒスタミンが血管に作用し、血管の透過性が高くなり、血中成分(好中球・マクロ ファージ、リンパ球などを含む)が血管から滲出する
④好中球などが歯周病原菌と戦う際にサイトカインなどを作り出してしまう
⑤このサイトカインなどが歯周組織にダメージを与え、破壊を起こす
【歯垢(プラーク)の除去】
歯垢は空気を吹きかけたり、口をゆすいでも取れませんが、歯ブラシなどでこすり取ることができます。
歯垢の着きやすい所は、歯の噛む面の溝、歯と歯肉の境、歯と歯の間で、歯周病や虫歯の始まる所と一致しています。
歯垢は歯と似た色をしているので、見分けがつきにくいのですが、特別な染色液で染め出すことが出来ます。
歯の全表面の歯垢量を100%とすると、3回うがいすると10%が取れ、口腔洗浄器では30%、ブラッシングでは85%が取り除けます。
現在歯垢を取るのに一番効果的なのは毎日のブラッシングです。
(5)歯石について
歯周病の原因の2番目は歯石です。
歯石は歯の表面にくっついている石の様な物でその成分によって、黄色かったり、黒かったりします。
歯石はもともとは歯の表面についていた歯垢で、その歯垢が2週間ほどついたままになると、唾液中の石灰分を取り込み、硬化して歯石になります。ですから歯垢を歯ブラシできちんと取れば、歯石は溜まりません。
歯石には2種類あり、歯のまわりの歯肉より上の部分に付いた黄色い歯石(歯肉縁上歯石)と、歯肉の中(ポケットの中)の歯の表面に付いた黒い歯石(歯肉縁下歯石)とがあります。
黄色い歯石は歯肉縁の上の歯面に沈着し、黒い歯石ほどは硬くなく、主に唾液に含まれる石灰分がミネラル源となっているため、下顎前歯の裏側や上顎臼歯の頬側のような唾液腺(舌下腺・顎下腺、耳下腺)の開口部付近に溜まりやすいです。また噛む相手(対合歯)がいない歯の表面にも、噛むことによる清掃効果がないため、歯垢が溜まりやすく、それが歯石となって歯の噛む面を覆ってしまうこともあります。
黒い歯石はポケット内の歯面に沈着し、歯周病による炎症のある部位に溜まり、歯肉からの血液などが混じって黒くなっています。黒い歯石は緻密で硬く、歯にしっかりとくっついています。血清に似た歯肉浸出液がそのミネラル源であるともいわれています。
歯石は歯垢つまりは細菌の塊が硬くなった物ですから、歯垢と同じ様に為害作用があります。歯石の表面はザラザラしており、そのために歯肉に悪い刺激を与えますし、ハミガキにより歯肉がザラザラした歯石に押しつけられ炎症がひどくなります。さらに歯石の表面はザラザラしているため歯垢が付着しやすくなり、加速度的に歯石は大きくなります。いったんついてしまった歯石は歯ブラシでは取れません。歯石を取るには歯科医院に行って取るしか方法はありません。半年に一度は歯科医院で歯磨きのチェックと歯石を取る必要があります。
2.ブラッシング指導
(1)歯ブラシの選び方
一般的には人指し指の先から第1関節ほどの大きさのヘッドでストレートな柄のものが使い易いようです。
歯ブラシの毛の裏側から見て毛先がはみでたら、歯ブラシを取り替える時期でしょう。
高齢者や不器用でブラッシングが上達しない場合は電動歯ブラシをお薦めします。
歯ブラシの硬さは、一般的には硬いほうが歯垢が10~20%よく取れるようです。歯肉が腫れている場合や痛みが有る場合は柔らかい歯ブラシで2、3週間から数カ月慣れてから硬めの歯ブラシに変えてください。
(2)ブラッシングのタイミング
ブラッシングのタイミングとしては、理想的には1日3回毎食後3分以内に3分以上行って下さい。
食後30分はブラッシングしない方が良いとの情報が一時喧伝されましたが、これは酸蝕症という特殊な病気に対する警鐘でした。酸蝕症の患者では酸性の食物や胃液により歯の表面のハイドロキシアパタイトという歯の石灰分が溶け出します(脱灰)。唾液には酸の緩衝作用がありますので、30分から60分経って酸の脱灰作用が弱まるのを待ってからブラッシングした方が良いという研究でした。しかしこの研究は酸蝕症という特殊な状況下での予防法であり、試験管内の研究によるものでした。研究をされた方も自身の研究が誤った解釈をされ、面食らったことでしょう。
現実の一般的な食生活では食後なるべく早くにブラッシングをして、口腔内から糖分や歯垢を除去し、歯垢を歯石に育てさせないことが重要です。
(3)ブラッシング時間と回数
ブラッシングはきちんと行うと最低でも10分以上はかかります。
また時間がとれない場合でも、1日1回は十分な時間をかけて磨いて下さい。
1日3回いい加減な方法で短時間ブラッシングするより、1日1回ひまなときに正しい方法で2、30分しっかり磨く方が効果的です。
(4)ブラッシング時の出血について
たとえ正しい方法でブラッシングをしても歯肉に炎症がある場合は出血が有ります。しかし出血があるからといって、ブラッシングをおろそかにすると、ますます歯肉の炎症がひどくなります。
一般に歯周病に罹っている人が歯科医院で習った正しいブラッシングを行うと、最初はそれまでより出血しますが、1週間も続けるとそれほど出血しなくなります。正しい方法にもかかわらず出血するような部位は炎症があるわけですから、出血を恐れず、むしろ一層ブラッシングに励んで下さい。
(5) 歯肉マッサージについて
歯肉を積極的にマッサージする必要性については疑問があり、本当に効果的かは証明されていません。
マッサージは血行を良くし、治癒を促進します。また歯肉上皮が肥厚角化し、抵抗力が増します。マッサージが全く不必要というわけではありません。しかし、歯肉マッサージだけでは歯周病は治りません。
極端な例では、皮膚にとげが刺さって腫れて痛い時、その上からマッサージしても治りませんが、原因となっているとげを抜けば、マッサージの如何にかかわらず、治ります。
歯周病症の場合も原因である歯垢、歯石が取り除ければ、マッサージの有無に係わらず治ります。
またマッサージをしすぎると歯肉が退縮してしまいます。
ブラッシング法には積極的な歯肉マッサージを重視するローリング法などや歯垢除去を重視するスクラッビング法やフォーンズ法などがあります。
様々な実験研究の結果、歯肉マッサージを重視する方法より歯垢除去を重視する方法の方が歯周病の治療には効果的であることが分かってきました。またスクラッビング法や フォーンズ法でも歯肉に必要なマッサージ刺激は十分加わりますので、それ以上のマッサージは必要ありません。
以上のことから当歯科医院では歯肉マッサージは積極的には勧めていません。
(6)ブラッシング方法について
ブラッシング法には歯ブラシを使った方法として
①スクラッビング法 ②バス法 ③フォーンズ法
④ローリング法 ⑤ティルマン改良法 ⑥チャターズ法
があります。
① スクラッビング法 ③ フォーンズ法 ④ ローリング法 が比較的容易に習得できるようです。特に①スクラッビング法と③フォーンズ法は歯垢の清掃効果も高く、当歯科医院ではこの両方法を指導しています。
比較的最近出てきた歯ブラシ法に、
⑦ワンタフト歯ブラシ法
があります。1歯ずつ磨くため時間がかかりますが、隅々まで磨けるので、お勧めです。
そのほかに歯と歯の間を磨く方法として
⑧デンタルフロス法と歯間ブラシ法
があります。
① スクラッビング法
当歯科医院では成人の方にはこの方法を勧めています。
現在考えられているブラッシング法のなかで、一番清掃効果が高く、覚え易いようです。
但し、横磨きになりやすいので注意が必要です。
〔頬側〕
歯面に垂直に毛先を当て、歯肉とわずかに接するか接しないかにします。
毛先を軽く押し、毛先は歯間部に入ります。
歯ブラシを前後に数mm動かします(振動させるイメージです)。横磨きとの違い、毛先は絶対に歯を乗り越えて動かしてはいけません。1歯につき10回振動させます。 歯ブラシの毛先は一度に3歯磨けますが、必ず1歯ずつ順番に磨いていきます。
その際毛先が犬歯をまたがないようにします(つまり第1小臼歯を磨いたら次は側切歯を磨きます)。犬歯は突出した歯なので歯肉を刺激しすぎると歯肉退縮が起こりやすいためです。
常に磨き始める場所と順番を一定にして絶対変えません(磨き残し、磨き忘れを防ぐためです)
〔咬合面〕
咬合面に垂直に毛先をあて、溝の中に毛先が入るようにします。
毛先を振動させます1歯ずつ磨きます。
〔舌側〕
歯ブラシの3列のうち1列は咬合面にかかるようにし、毛先が45度の角度で歯面にあたります。
毛先を振動させます。1歯ずつ磨きます。
前歯はかきあげるようにします。
〔最後臼歯の遠心面〕
歯ブラシの先の方を使い、縦に磨き上げます。
あるいはウルトラフロスか細く切ったガーゼを使います。
②バス法
スクラッビング法に非常によく似た方法です。
歯ブラシの毛が歯軸に対して45度になるように傾け、毛先がポケット内と歯肉に接するように弱い圧力で押しつけて、前後に数mm振動させます。
軟らかい歯ブラシを使います。
舌側を磨く時も毛先は咬合面に乗りません。
咬合面はスクラッビング法と同じです。咬合面に垂直に毛先をあて、溝の中に毛先が入るようにします。
毛先を振動させます1歯ずつ磨きます。
ポケット内や歯間部の清掃に適しますが、歯面全体の清掃効率はスクラッビング法に劣ります。
③フォーンズ法
手先の器用でない方やお子さんにはこの方法を勧めています。
歯垢除去効果は高く、比較的容易に習得できます。
歯ブラシは比較的柔らかめが適当です。
〔頬側〕
上下の歯をあわせ(切端咬合)、毛先を歯面に直角にし、円運動を描きます。
一度に上下顎数歯ずつ磨けます。
〔舌側〕
横磨きです。
〔咬合面〕
毛先を咬合面に垂直にあてて小刻みに前後運動します。
④ローリング法
歯肉マッサージが主体です。
歯垢除去効果はやや低いですが、比較的容易に習得できます。
歯肉辺縁から2、3㎜に歯ブラシの毛先を当てます。
歯肉が白くなるくらい圧力を加えてから、歯冠方向に回転させます。
マッサージをやりすぎると歯肉退縮を起こします。
⑤スティルマン改良法(スティルマン法+ローリング法)
歯ブラシの毛の脇腹を歯肉辺縁部に当てて圧迫後、振動(円運動)を与えてから、歯冠方向にずらしてからローリングさせます。
お薦めしていません。
⑥チャターズ法
スティルマン改良法と逆。
まず毛先を歯冠方向に向け、歯面に45°の角度になるように毛先を当てます。
毛先を歯肉方向へずらしてから円運動をするようにして圧力を加えます。
極めて難易度が高く、習得が容易ではなく、しかも清掃効果は低いです。
お薦めしていません。
⑦ワンタフト歯ブラシ法
ワンタフト歯ブラシは、毛束が1つだけになった小さなピンポイント用歯ブラシです。当院では「プラウト」という名の商品を販売しています。
通常の歯ブラシでは届きにくい、歯と歯の間、歯の裏側や奥歯の後ろ側、矯正装置周辺の歯垢を効果的に除去できます。
歯周病や虫歯の予防に非常に有効で、1本1本の歯を順番に清掃していきます。
1本の歯に対し、フォーンズ法を行うイメージで、軽い力で優しく円を描くように動かすのがコツです。
1本の歯に対し、スクラッビング法を行うイメージでもかまいません。
清掃時間短縮のため一般的な歯ブラシと併用してもかまいませんし、時間がかかりますが、ワンタフト歯ブラシで全部の歯を磨いても構いません。隅々まで歯垢を除去したい方に向いています。(院長はプラウトと歯間ブラシで1回10分以上かけて1日3回磨いています)
小さい毛先ですので、消耗して毛先が開きやすいのが欠点ですが、清掃効果は抜群で、一般的な歯ブラシより安価ですので、どんどん替えてください
⑧ デンタルフロス(糸ようじ)と歯間ブラシ
歯間部は歯ブラシではどんなにがんばっても50%しか歯垢を取り除くことができません。
デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシを使うと歯垢の90%までが取り除けます。できれば1日に1回は行ってください。
フロスは歯間部に空隙のない若い人向きで、歯間ブラシは年配で空隙のある人向きで、歯間ブラシの方が清掃効果が高いので歯周病の治療にはこちらの方が効果的です。しかしフロスは歯の接触点部も磨け、虫歯の予防になりますから、歯間部に空隙のある方も時々はフロスを使って下さい。フロスと歯間ブラシの両方をあるいは交互に行うことがベストです。
a)デンタルフロス
フロスにはワックス付きとワックス無しがありますが、ワックス無しの方が勧めです。適当な長さに切ったフロスを両手の人指し指に巻き付け、のこぎり引きの要領で歯間部に通し、歯に沿って上下に動かして汚れをかきとります。
指に巻き付けるのが面倒な場合や、うまくできない場合は先がふたまたになったフロスホルダーやウルトラフロスを勧めています。
b)歯間ブラシ
年配となり、歯間部の歯肉が退縮していて空隙がある人の場合、歯間部の清掃には歯間ブラシが最適です。
歯間部の清掃にはフロスより効果的ですが、歯の接触点部は磨けないので、時々は虫歯予防のためフロスを使って下さい。
歯間ブラシには太さによってSSS、SS、S、M、L、LLのサイズがあります。最初はやや細めの物を使って慣れて下さい。
まず歯間部へ毛先を3ミリほど差し込み、方向が定まったら前後に数回動かして下さい。毛先が両隣の歯の側面に同時に接触する大きさの歯間ブラシを選んで下さい。
奥歯の歯間部を清掃するためにストレートな歯間ブラシの毛先を曲げる場合、針金の部分で曲げると折れてしまいやすいので根元のプラスチックに覆われた部分で曲げてください。
使う方の好みによりますが、L字になった歯間ブラシがお勧めです。
(7)歯磨き粉
残念ながらテレビのコマーシャルの1/10の薬理効果も期待できません。歯垢を取る主体はあくまで歯ブラシなどによるブラッシングであり、歯磨き粉はその補助にしか過ぎません。(典型的な過剰広告といえます。蛇足ながら義歯安定剤のコマーシャルも悪質です)
むしろ発泡剤のため口の中が唾液と泡だらけになり、ブラッシングを十分な時間ブラッシングできなくなります。
また、歯がきれいになっていなくても、含まれている香料や清涼剤のため、爽快感が得られ、きれいになった気分になってしまいがちです。
しかし歯磨き粉をまったく使わないと歯の表面が空気の汚れや茶渋のために着色してきます。歯の着色を予防するためにせいぜい1日1回歯ブラシの毛先の1/3 もつければ十分です。テレビのコマーシャルのように大量につけて、横磨きをすると歯の根の部分が研磨剤で楔状に削れてしまい、歯がしみるようになってしまいます。
むしろ歯磨き粉は使わないで、十分な時間ブラッシングし、歯が着色したら、定期検診を兼ねて歯科医院でクリーニング(有料で1回3000円~4000円)してもらう方が賢明です。
但しフッ素を配合した歯磨き粉は虫歯予防には効果が有ります。
当院で販売している歯磨き粉には体に害がないとされる最大量のフッ素が含まれていますし、歯を削らないように研磨剤は含有していません。
(8)電動歯ブラシについて
手の不自由な人や不器用な人は電動歯ブラシが効果的です。
スクラッビング法やバス法に則って毛先を移動させて下さい。
口腔内全体の清掃効果は高いのですが、歯列不正のある人は手で磨く方が清掃効果は高いでしょう。
但し、電動歯ブラシを使っている人の口腔内を見ると、手による歯ブラシが上手く出来ない人は電動歯ブラシを使っても歯垢はあまり取れていません。歯ブラシの毛先が届いていない部位は電動歯ブラシの毛先も届いていません。電動歯ブラシは手による歯ブラシより短時間で磨けますが、磨き残しの欠点は改善されません。歯垢が取れるか否かはハードの問題ではなくて、ソフトの問題のようです。
3. 歯周病の治療
歯周病の主原因は歯垢と歯石です。歯垢と歯石が歯の表面に付いていない状態を維持できるようになれば、歯周病は悪化せず、歯周組織の現状維持ができ、歯肉の腫れは収まり膿も出なくなり、歯周病はしだいに治っていきます。
歯周病の主な治療はブラッシング(歯みがき)と歯石除去になります。
(1)ブラッシング(歯みがき)
歯垢を取るのに一番効果的な方法は毎日のブラッシングです。歯周病の治療の主体は患者様ご自身で、歯科医院は歯ブラシ法を指導したり、磨き残しをチェックしたりして患者様のお手伝いの役割をします。
歯垢は硬く、歯に密着していますので、患者様が行うブラッシングでは取れません。歯石を除去するには歯科医院でエアスケーラー、超音波スケーラー、ハンドスケーラーを用いて、歯科医師や歯科衛生士が除去します。
初診や定期検診の時に、お口の中の歯周病の状態を知るために、先ずポケットの深さを測定します。ポケットが深いほど、また深い歯が多いほど、歯周病は進行しています。
歯周病が進行しているとポケット内部の歯の表面に黒い歯石が付着していることが有ります。
ポケットの深さの測定後は担当歯科衛生士から状態の説明を受け、歯ブラシの指導を行います。一般的には赤い歯垢染色液で歯の表面に付着している歯垢を確認後、歯ブラシ法を教わります(ブラッシング指導)。その後実際に歯ブラシを使って、歯垢を取り除いていただきます。歯ブラシの選び方、持ち方、動かし方の指導を行います。
「ブラッシング法は前に習って覚えているから、習う必要はない」とおっしゃる患者様がいますが、そのような方できちんと磨けている方に出会ったことはほとんどありません。残念ながら、そのような患者様では歯周病は改善されず、長期的には悪化していきます。
ブラッシング指導を受けた当初は正しい磨き方ができますが、ほとんどの方で、効率的で磨き残しの少ないブラッシング法から、しだいに歯垢の取り残しの多い自己流のブラッシング法に戻っていきます。そのため定期検診のたびにブラッシング法を習い直し、修正していくことが肝要です。一度習ったからそれで終わりではありません。
正しいブラッシング法を習得するのはスポーツと同じです。野球で言えば、目で見てバットの振り方が頭で判っても、誰でも大谷選手と同じようにホームランを打てるわけではありません。つまり頭でブラッシング法を理解しても、それが実践できるかどうかは分かりません。たとえ実践できるようになっても、スポーツのように定期的な反復練習が欠かせません。
定期検診のたびに磨き残して歯に付着している歯垢を染色液で染めて、取れていない歯垢を確認します。その後、ブラッシング法を学び直し、自分の磨き方の欠点を知り、どこに磨き残しができ、どうすれば歯垢を全て除去できるようになるかを歯科衛生士や歯科医師と共に二人三脚で修正していくことが大切です。
(2)歯石除去(スケーリング)
2番目の原因の歯石は、取り残しとなった歯垢が唾液の中の石灰分を取り込み硬化したもので、歯にしっかりくっついているので歯ブラシでは取れません。歯石は歯科医院で特別な器具を使用して取るしかありません。
歯石を除去する際に使用する器具
歯石の除去する時に使用する器具としては、①エアスケーラー、②超音波スケーラー、③ハンドスケーラーがあります。
①エアスケーラー
歯科ユニットには歯を削る時に使用するエアータービンが附属しています。このタービンの代わりにエアスケーラーを装着します。圧縮空気により毎秒6千回ほどの微細振動をしているエアスケーラーの先端を歯石に当てて歯石を除去します。比較的歯石除去時の痛みを感じにくいのが特徴です。
②超音波スケーラー
当院で現在使用しているのはピエゾ(圧電素子)型超音波スケーラーです。超音波スケーラーの先端は中にあるセラミック結晶板(圧電素子)と結合しており、この圧電素子に電圧をかけて毎秒約3万回ほど振動させて、歯石を除去します。ピエゾ型超音波スケーラーは従来型の磁石型超音波スケーラーと比べ、歯石除去能力が高いのが特徴です。磁石型超音波スケーラーは内部の磁石が破損しやすく、ランニングコストが高いので現在はほとんど使用されていないようです。
③ハンドスケーラー
先端の形が前歯、小臼歯、大臼歯の形にあわせた形状のインスツルメント10数種類を使用し、先端をポケットの中の歯石の先まで挿入し、歯石を剥がし取ります。深いポケット内の歯石除去に活躍します。深いポケットで歯石が大量に付着している場合は治療時の痛みを軽減するために歯肉に麻酔液を注射することがあります。
(3)歯周ポケットの状態とスケーリング治療の回数
当院では、歯周病の治療のために、初診や定期検診のたびに歯周ポケットの深さを測定しています。
まず代表的な12本の歯の周囲のそれぞれ6か所の歯周ポケット(歯と歯茎の間にできた溝で3mm以下が健康な状態)の深さを測定します。その後、残りの歯の歯周ポケットの深さを測定します。
歯周ポケットが深いほど歯周病は進行しており、4mm以上、6mm以上、8mm以上のか所の数に応じて4~10回で口腔内全体をスケーリング(歯石除去)しています。また定期検診のたびに歯ブラシ指導を行い、自己流に戻ってしまった歯磨き法を修正していただいています。この修正が大切で、これを怠ると歯周病は進行していきます。
代表的な12本の歯を6か所ずつ合計72か所の歯周ポケットを測定した結果、
①4mm以上が48か所未満:2回連続達成の場合は極めて良好な状態で全顎を4回でスケーリング(歯石除去)します。
②4mm以上が48か所以上:ほとんどの患者様がこのレベルで全顎を6回でスケーリングします。
③6mm以上が6か所以上:中等度以上の歯周病で、全顎を8回で念入りにスケーリングします。
④8mm以上が3か所以上:歯周病がかなり進行しており、全顎を10回で特に念入りにスケーリングします。
(4)歯周病で歯の周囲の歯肉が腫れた時の切開治療
歯周病が進んでいる歯の周囲の歯肉が腫れるときがあります。ひどいときは顔の形が変わるほど腫れる場合があります。
このような場合は、レントゲンを撮ったり、ポケットの深さを測定したり、歯を軽く叩いてみたりして、原因となる歯を特定します。
原因歯の周囲の腫れた歯肉を3%過酸化水素水で消毒します。その時、歯肉表面にわずかな発泡があり、歯肉がぶよぶよして波動(歯肉内の膿が移動する)がある場合は、腫れた歯肉に注射の浸潤麻酔をして、炭酸ガスレーザーを使用して歯肉を切開し溜まった膿を排出させます(排膿)。原因歯に深いポケットが存在する場合が多くそのポケット内に抗生物質を含んだ軟膏を注入します(この軟膏については後述する「(8)ミノサイクリン塩酸塩のポケット内注入」を参照してください)。その後抗生剤を服用していただき、歯肉の回復を経過観察していきます。歯が浮いて噛み合わせが高くなっている場合は必要に応じて強くあたっている歯の部分を削り、噛み合わせの調整を行います(咬合調整)。
過酸化水素水で歯肉が発泡しない場合は、切開をしても排膿してこない場合が多いので切開は行わず、腫れた歯肉に炭酸ガスレーザーを照射し、深いポケットに抗生物質の入った軟膏を注入します。その後、抗生剤を服用していただき、経過観察します。
(5)歯周病に罹患した歯のかみ合わせの調整(咬合調整)
歯周病で問題のある歯は周囲の組織の炎症のため、浮き上がってくることがあります。浮いた歯は上下の歯をかみ合わせた時に他の歯より早く接触します。この早期接触のため歯周組織の炎症がひどくなります。炎症がひどくなると歯はより浮き上がり、さらに早期接触がひどくなってしまうという悪循環が起こります。この場合、浮いて早期接触を起こしている歯の噛みあわせを調整して、悪循環を断ち切ります。
歯周病に罹っている歯で、歯が浮いてくるほどではありませんが、かみ合わせに問題がある場合は咬合調整を行います。かみ合わせが単純に高くなっている場合もありますし、歯ぎしりや食物をかみつぶす動作など歯を左右にスライドさせた場合(側方運動)に特定の歯だけ当たる様な咬合の異状がある場合もあります。この様な歯では歯根周囲の歯槽骨が歯根に沿って垂直的に骨吸収が起こっている場合があります。このようにかみ合わせにより、歯周組織に障害が起きている場合を咬合性外傷と呼んでいます。
歯並びは長期的には変化しており、歯の位置は微妙に動いています。そのため咬合調整が必要になった歯については、定期検診のたびに咬合に変化が起きて問題が起きていないか確認します。かみ合わせが高くなっていた場合は咬合調整を行って、咬合性外傷を防ぎます。
(6)歯周外科手術
しっかり歯ミガキができるようになり、歯石を取っても、歯周病が治らずポケットが深いままの場合は手術をして歯肉を切らなければならないこともあります。
①歯肉切除術
歯肉切除術(ジンジベクトミー)は、深い歯周ポケットを改善する治療で、歯肉に浸潤麻酔を行った後に歯肉をメスや電気メスやレーザーでポケット底部まで切除します。その後歯周包帯(歯周パック)で歯肉の切除部を1週間ほど被覆して、歯肉が治癒するのを待ちます。
全ての歯周外科手術後は、2週間程度は赤みや微出血が出ることがあります。また、術後は歯ブラシの仕方に注意が必要なため、歯科医師の指導に従う必要があります。
歯肉を切除するため歯は口腔内に長く露出するようになります。歯の根の部分が長く露出した場合に知覚過敏を起こす場合がまれにあります。
審美目的(ガミースマイル改善など)で手術する場合は全額自己負担(自由診療)となります。
②歯周ポケット掻爬術
歯周ポケットの深さが3~4mm程度の比較的軽い歯周病の場合、浸潤麻酔を行った後、歯肉を切り開かずに、専用の器具(キュレット)を用いて歯周ポケットの歯肉内側の炎症組織や歯根に付着した汚れを「手探り」で除去します。その後、歯周包帯(歯周パック)で歯肉の切除部を1週間ほど被覆して、歯肉が治癒するのを待ちます。
手術の治癒後、歯肉は再び歯に密着して、ポケットが浅くなります。
③歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)
通常の清掃では届かない深い歯周ポケットがある重度の歯周病で行います。
浸潤麻酔後に歯肉を切開して一時的にめくり(剥離)、歯の根元を露出させた状態で歯根に付着した汚れを取り除く手術です。
歯肉を剥がして直接目で確認しながら、深い部分にこびりついた歯石や感染組織を確実に除去します。 視認性が高いため、取り残しが少なく、より確実な治療が可能です。
剥離した歯肉は縫合し、歯周包帯(歯周パック)で手術部を1週間ほど被覆して、歯肉が治癒するのを待ちます。
(7)レーザー治療
当院では炭酸ガスレーザー治療を行っています。
炭酸ガスレーザーは水分に反応します。高強度のレーザーを照射した場合、体組織の水分に吸収されることでレーザー照射された組織は高温となり、蒸散します。高強度ではなく適切な弱強度に調整されたレーザーを照射された歯肉組織の細胞は、蒸散するような高温となることはなく、細胞にとって適切な温度上昇となり、細胞は活性化し、治癒能力が高まります。
これを利用してポケットの深い歯肉部に炭酸ガスレーザーを週1、2回照射することを繰り返します。これにより、ポケット底部の位置はあまり変化しませんが、歯肉の腫脹が治まっていき、歯肉頂部の位置が下がってポケット底部に近づいていき、結果としてポケットが浅くなっていきます。
(8)ミノサイクリン塩酸塩のポケット内注入
歯周病治療によく使われる抗生物質を含んだ軟膏があります。
歯石除去後や歯肉が腫脹したり膿を持ったりした時にミノサイクリン塩酸塩というテトラサイクリン系の抗生物質が含まれている特殊な軟膏をポケット内に注入します。これにより歯周病の原因となる細菌を殺菌し、歯肉の腫れや出血などの炎症を抑えます。歯肉の炎症が治まるとポケットが浅くなります。
この軟膏には抗生物質(ミノサイクリン塩酸塩)が入った無数のマイクロカプセルが含まれており、このカプセルが徐々に溶けて中に含まれている抗生物質を放出して、1週間ほど効果を発揮するように設計されています。
